「脳振盪の評価をしているときのレッドフラッグって何?」
「脳振盪を評価しているときにどう緊急事態と判断すればいいの?」
脳振盪の疑いがある場合には、すぐにプレーを中止する必要があります。すべての脳振盪が緊急時と判断する必要はありません。
しかし、頭部への直接的な打撃や頭部や顔以外の部位に衝撃があり、脳を揺らすようなものであれば、緊急時と判断する必要のある場合があります。
この記事では、脳振盪を起こすような衝撃があった場合に緊急対応が必要と判断できるために知っておくべき「レッドフラッグ(警告)」について説明します。
レッドフラッグ(警告)とは?
レッドフラッグ(警告)とは、第6回国際スポーツ脳振盪会議の合同声明と一緒に公開された脳振盪の評価ツールであるSCAT6のステップ①にある症状と徴候です。
脳振盪を起こす可能性のある頭部への直接的な打撃や頭部に伝わる他の部位の衝撃があり、レッドフラッグを確認した際には、緊急時対応が必要と判断し、すぐに緊急時対応計画(Emergency Action Plan: EAP)に載っている最寄りの救急医療機関への搬送や受診をする必要があります。
脳振盪は、どのスポーツでも起こり得るため、EAPには緊急度の高い頭頚部外傷を疑った際に迅速に搬送できるように脳神経外科など重度の頭頚部外傷に対して救命処置を実施できる救急医療機関を事前に調べておく必要があります。
- 頸部痛/頸部の圧痛
- 複視
- 四肢の脱力やしびれ、灼熱感
- 強い頭痛やその増悪
- 発作やけいれん
- 意識消失
- 意識障害
- 嘔吐
- 不穏や興奮、癇癪
脳振盪のレッドフラッグ(警告)?それとも?
このレッドフラッグ(警告)は、脳振盪の評価をするためのツールであるSCAT5のステップ①になりますが、脳振盪だけというよりも、脳振盪を含めた頭頚部外傷のレッドフラッグ(警告)として認識しておく必要があります。
脳振盪は脳の機能障害であり、器質的には脳の損傷がありませんが、レッドフラッグ(警告)が出現した際には、頭部、特に脳や頚部の器質的損傷を疑う必要があります。
頭部、特に脳や頚部の器質的損傷を疑う必要のあるレッドフラッグ(警告)があった場合には、すぐにEAPを発動 し、頭頚部外傷を疑い、頭頚部の固定をする必要があります。
頭頚部外傷を疑ったときに、頭頚部の固定をする方法として代表的なのが、MILSです。MILSに関しては詳しく下記の記事で解説しています。
レッドフラッグでEAPの発動
レッドフラッグが確認された場合には、緊急時と判断する必要があるので、EAPを発動します。
いつ緊急時と判断する必要があるかは、スポーツドクターやメディカルスタッフ、アスレティックトレーナーなどの専門家だけではなく、指導者や選手、大会運営者などスポーツ現場の関係者は全員知っておく必要があります。
専門家以外のスポーツ現場の関係者に教えるには、分かりやすいように2つのチェックポイントとして意識と呼吸がありますが、頭頚部外傷で緊急時と判断する必要のあるレッドフラッグについても教えておく必要があります。
専門家以外のスポーツ現場の関係者のためのレッドフラッグ(警告)
上記に示したレッドフラッグ(警告)はSCAT6に示されたもので、ドクターやアスレティックトレーナーなどの専門家向けで難しいので、専門家以外のスポーツ現場の関係者にはSCAT6ではなく、子どもから大人まで脳振盪を見逃さないための評価ツールであるCRT6のステップ①にあるものを教える必要があります。
- くびが痛い/押さえると痛む
- ものがだぶって見える
- 手足に力が入らない/しびれる
- 強い頭痛/痛みが増してくる
- 発作やけいれんがある
- 一瞬でも意識を失った
- 反応が悪くなってくる
- 嘔吐する
- 落ち着かず、イライラして攻撃的
SCAT6とCRT6に記述されているレッドフラッグ(警告)は当たり前ですが、同じ症状と徴候になりますが、専門家には専門用語を使い、専門家以外の一般の方には分かりやすい言葉で書かれています。
アスレティックトレーナーなどの専門家であれば、スポーツ現場で活動する際にはしっかりとこのレッドフラッグ(警告)は頭の中に入っている状態だと思いますが、指導者や選手などであれば、常に覚えているとは限りません。
いざという時には忘れてしまう可能性もあります。
CRT6もSCAT6も脳振盪の疑いがある際にはスポーツ現場で静かな場所で評価するためのツールなので、必ずメディカルキットの中やスポーツ現場に持って行く書類の中に数枚のコピーは入れておきましょう!
「EAPって何?」という方はぜひ下記の記事を読んでみてください。