JCS(ジャパン・コーマ・スケール)とは?知っておきたいスポーツ現場で使う意識評価の指標

「JCSって何?」

「ジャパン・コーマ・スケールってどんな指標だっけ?」

「ジャパン・コーマ・スケールってどう使えばいいの?」

今回の記事では、「ジャパン・コーマ・スケール」について解説します。

JCS (ジャパン・コーマ・スケール)とは

ジャパン・コーマ・スケールは、よく日本で使われている意識障害の評価分類スケールで、「III-3度方式」として1974年に発表されましたが、翌年の1975年に「3-3-9度方式」に変更され、1991年にJCSと改訂されました。

JCSは、上記のように

  1. 刺激なしで覚醒している状態、
  2. 刺激によって覚醒する状態、
  3. 刺激しても覚醒しない

3つのレベルで傷病者の意識・反応レベルを3桁の数字で表す指標です。

JCSの使い方

JCSの記載方法には、2種類あります。

一般的に多いのは、「I-2」「II-20」「III-300」というような記載方法です。正しい記載方法は「JCS 2」「JCS 20」「JCS 300」になります。そして意識が清明な場合には「JCS 0」と記載します。

記載方法については、私は、スポーツ現場で一緒に働く医師や看護師の方に合わせて記載するようにしています。一方、スポーツ現場に医師や看護師だけではなく、アスレティックトレーナーなど他の専門家がいない場合には、必ず正しい記載方法でスポーツ外傷・障害・疾病報告書には記載するようにしています。

不穏状態があるときの付記方法

不穏状態があれば、英語の「Restlessness」の頭文字のRを数字の後ろに付けます。

例えば、大きな声、または体をゆさぶることで開眼する傷病者が不穏状態である場合には、「JCS 20-R」と記載します。

失禁があるときの付記方法

失禁があれば、英語の「Incontinence」の頭文字のIを数字の後ろに付けます。

例えば、痛み刺激で手足が動いたり、顔をしかめたりする傷病者が失禁している場合には、「JCS-200-I」と記載します。

自発性喪失があるときの付記方法

自発性喪失には、無動性無言症(akinetic mutism)や失外套症候群(apallic state)があります。JCSでは、無動性無言症もしくは失外套症候群のどちらでもあれば両方の英語の頭文字であるAを数字の後ろにつけます。

例えば、痛み刺激で手足が動いたり、顔をしかめたりする傷病者に無動性無言症がある場合には、「JCS-200-A」と記載します。

JCSを使う場面

JCSは、スポーツ現場での緊急時に傷病者の意識・反応レベルの状態を簡単に迅速に共有することができます。

救急車を呼ぶときに電話する際にJCSを伝えることによって、現場に向かっている救急隊員に傷病者の状態を共有することができます。

スポーツ現場での救急隊員や医師などのメディカルスタッフとの共有だけではなく、救急車で救急隊員が病院に搬送する医療機関にいる医師や看護師とも共有できます。

JCSは、病院前救護(プレホスピタルケア)、救急外来や集中治療室では日常的に使用されていて、医師や看護師、救急隊員であれば誰もが知っている基礎的な知識です。

JCSは、脳血管障害(脳梗塞、くも膜下出血など)や頭部外傷の急性期における意識障害患者の意識レベル、特に脳ヘルニアの進行を知ることに優れている特徴があります。

「昏迷、半昏睡、昏睡、深昏睡」というように意識状態を表現したり、「なんとなくおかしい、ぼーっとしている、全く返事をしない」などと表現しても、どのような状態かを伝えるのは難しい問題があります。これに対して、JCSは、「覚醒」を軸に、誰もが同じように評価できるように開発された指標です。

スポーツ現場では特に、頭部外傷の急性期で時間経過とともに意識レベルが変化する可能性があるため、救急隊員のプレホスピタルケアと医療機関と共通した方法で評価し、記録することが大切です。

JCSの注意点

JCSは、脳血管障害や頭部外傷などの一次性脳障害の重症度や緊急度、そして進行度を「覚醒」を軸に誰もが評価できるように開発された使用なので、精神状態を評価する方法としては適していない点に注意しなければなりません。

JCSの使い方と記載方法の練習

JCSについての基礎知識はここまでで説明してきたので、次は実際の現場で使えるようにするために練習が必要です。スポーツ現場でJCSを使って評価し、結果を報告書などに記載できるようにするためには以下のステップで練習するようにしています。

  1. JCSの項目と記載方法を1人でひたすら覚える
  2. 2人でペアになり、お互いに傷病者の状態を言って、もう1人がJCSを記載する
  3. 1人が傷病者の役をして、トレーナー役が意識レベルの評価をして、救急車を要請する電話でJCSを伝える
  4. スポーツ現場でのEAPのシミュレーション訓練を実施し、救急車を要請する電話でしっかりとJCSを伝えているか、緊急時対応後にスポーツ外傷・障害・疾病報告書、または緊急時対応報告書にJCSが正しく記載されているかを確認する

まずは、自分ひとりでJCSに関する基礎知識を身につけて、ペアになってランダムにしても正しくJCSを評価できるかの練習をします。しっかりと覚えていたとしても、実践の場でJCSを使えないと意味がないので、意識レベルの評価と救急車要請の電話のロールプレーで練習していきます。

次に、緊急時の対応全体でしっかりとJCSを使えるようにするために、EAPシミュレーション訓練で練習する必要があります。

もちろん、JCSを使えるようにするためにEAPシミュレーション訓練をするのではなく、EAPシミュレーション訓練の中でJCSを使えているのかを確認する作業です。

EAPシミュレーション訓練での救急対応の中でしっかりと使えていたとしても、報告書にJCSの記載がなければ、意識レベルがどのように変化したかを検証することができないので、報告書にも忘れずに正確に記載しているかを確認しましょう。

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ABOUT US
ジンノウチ シュンアスレティックトレーナー
NPO法人スポーツセーフティージャパンに所属。 2011年に米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)になり、2013年にスポーツ医学/ バイオメカニクスで修士課程を修了し、日本に帰国。 選手や保護者など一般の方を対象に、スポーツ関連脳振盪の啓発のため、Facebookで「脳振盪ネットワーク」のページを運営。「脳振盪ハブ」では、スポーツ現場で活動するスポーツ医科学の専門家に向けて情報を発信中。