脳脊髄液漏出症とは?脳振盪の鑑別診断を解説

2022年12月10日の超WORLDサッカー!の記事「千葉レディース、MF安齋結花が脳脊髄液漏出症で手術」を読み、スポーツ現場で活動するアスレティックトレーナーが少なくとも抑えておかなければならない「脳振盪と脳脊髄液漏出症」に関して、この記事でまとめたいと思います。

脳脊髄液漏出症とは

2019年に出版された脳脊髄液漏出症診療指針では、「脳脊髄液腔から脳脊髄液(髄液)が持続的ないし断続的に漏出することにより減少し、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴、倦怠感などさまざまな症状を呈する疾患である」と定義されています。

診断基準など詳細については、一般社団法人(申請準備中)日本脳脊髄液漏出症学会のホームページを参考にしていただきたいです。

また、以前は一般的には「脳脊髄液減少症」と呼ばれていました。

安齋選手のように脳振盪が起こるような外傷で起こる場合もありますが、松永選手のように急に発症する場合もあります。

松永選手に関しては、長崎NEWS WEB「脳脊髄液漏出症~病と闘うテニス元実業団選手~」内にある動画で観ることができます。

2023年5月10日にスポーツ庁健康スポーツ課が各都道府県と各指定都市に対して「スポーツ外傷等による脳脊髄液減少(漏出)症への適切な対応について(事務連絡)」という通達を出しています。

この通達には、参考資料として、チラシ兼ポスター「スポーツ外傷等による脳脊髄液減少(漏出)症への適切な対応について」が添付され、多くの運動・スポーツ施設の救護室などには貼られて、利用者にも啓発するために掲示されています。

脳振盪と脳脊髄液漏出症

アスレティックトレーナーとして、脳脊髄液漏出症に関してまずこの存在を知ることからで、脳神経外科医の先生方と日頃から連携をとり、常に情報をアップデートすることが求められます。

スポーツ現場で活動するアスレティックトレーナーであれば、脳振盪のこともあるので、脳神経外科医の先生とは連携がとりやすい環境にいます。

脳振盪と脳脊髄液漏出症では同じような症状を呈しているため、脳脊髄液漏出症は脳振盪の鑑別診断の1つです。

特に背中や臀部から転倒して脳振盪が起こった場合には注意が必要です。

脳振盪の受傷直後などでのMRI検査では陰性になることがある点もしっかりと認識しておく必要があります。

脳振盪の場合には受傷直後に専門医の診察、そして段階的な競技復帰を進行する間に専門医のチェックの2回が一般的には推奨されています。

順調に段階的な競技復帰が進めば、1回目の診察から1-2週間の間に専門医を受診することになりますが、順調に進んでいない場合にはどのタイミングで受診するかはあらかじめ専門医と相談するようにしています。

SCAT6にはレッドフラッグがあるように、専門医を受診した後に関してもどのタイミングで、もしくはどのような症状や徴候がある場合には医師の診察を受ける必要があるかは、脳振盪を受診した際には医師と確認する必要がある大切な項目の1つです。

ジンノウチ

脳振盪のレッドフラッグ(警告)について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。

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ジンノウチ シュンアスレティックトレーナー
NPO法人スポーツセーフティージャパンに所属。 2011年に米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)になり、2013年にスポーツ医学/ バイオメカニクスで修士課程を修了し、日本に帰国。 選手や保護者など一般の方を対象に、スポーツ関連脳振盪の啓発のため、Facebookで「脳振盪ネットワーク」のページを運営。「脳振盪ハブ」では、スポーツ現場で活動するスポーツ医科学の専門家に向けて情報を発信中。