スポーツ外傷・障害・疾病調査に関する必読の論文をまとめました

「スポーツ外傷・障害・疾病調査に関する論文を読みたいけど、どの論文から読めばいいのか分からない…」

「スポーツ外傷・障害・疾病調査に関して絶対に読んでおいた方がいい論文を知りたい!」

今回の記事では、スポーツ外傷・障害・疾病調査をこれから本格的にスポーツ現場で実施したいと考えているアスレティックトレーナーの方やスポーツ現場でのスポーツ外傷・障害・疾病調査についてこれから学びたいと思っている学生トレーナーに最低限読んでいただきたい論文をまとめました。

日本語での論文と英語での論文の両方が含まれていますが、英語が苦手な方にもぜひ読んでいただきたい論文を厳選しているので時間を割いて読んでいただけたらと思います。

今回まとめた論文については、アスレティックトレーナーの方にはぜひ読んでもらいたい論文ということで、無料で全文にアクセスできる論文に限定しています

日本におけるスポーツ外傷・障害・疾病調査

スポーツ外傷・障害および疾病調査の方法論に関する指針やガイドラインなどは確立されませんでしたが、この共同声明によって、日本でこれからどのような調査手法で方法論をデザインすればいいのかを考える基盤を設けられたので、この論文は、まず読んでいただきたい論文になります。

砂川憲彦,真鍋知宏,半谷美夏,細川由梨,奥脇 透,広瀬統一,中山晴雄,武冨修治,笠原政志,眞下苑子,増島 篤:スポーツ外傷・障害および疾病調査に関する提言書:日本臨床スポーツ医学会・日本アスレティックトレーニング学会共同声明,日本アスレティックトレーニング学会誌,7(2):155-171,2022.

「スポーツ外傷・障害の診断名リスト(案)」に対するパブリックコメントへの回答ならびに「スポーツ外傷・障害の診断名リスト」の公開について

これだけは論文ではないのですが、上記の提言書を踏まえて、現在日本臨床スポーツ医学会で「スポーツ外傷・障害の診断名リスト」を作成しています。

まだ診断名のリスト案になりますが、それに対する回答が日本臨床スポーツ医学会のホームページで公開されています。

国際オリンピック委員会のスポーツ外傷・障害・疾病調査

日本臨床スポーツ医学会と日本アスレティックトレーニング学会の共同声明であるスポーツ外傷・障害および疾病調査に関する提言書は、日本での疾病調査になりますが、この共同声明が参考にしているのが、この国際オリンピック委員会の共同声明です。

Bahr R, Clarsen B, Derman W, Dvorak J, Emery CA, Finch CF, Hägglund M, Junge A, Kemp S, Khan KM, Marshall SW, Meeuwisse W, Mountjoy M, Orchard JW, Pluim B, Quarrie KL, Reider B, Schwellnus M, Soligard T, Stokes KA, Timpka T, Verhagen E, Bindra A, Budgett R, Engebretsen L, Erdener U, Chamari K : International Olympic Committee consensus statement : methods for recording and reporting of epidemiological data on injury and illness in sport 2020 (including STROBE Extension for Sport Injury and Illness Surveillance (STROBE-SIIS)). Br J Sports Med, 54 : 372-389, 2020.

パラスポーツに関するスポーツ外傷・障害・疾病調査

上記の国際オリンピック委員会が発表した共同声明を基にパラスポーツでも共同声明が発表されました。

健常者を対象にしたアスレティックトレーナーであれば、国際オリンピック委員会の共同声明を参考にすればいいですが、パラアスリートを対象にしているアスレティックトレーナーはパラスポーツに特化したこの共同声明を参考に、スポーツ外傷・障害・疾病調査を実施することが国際的な基準で疫学調査をすることが可能になります。

Derman W, Badenhorst M, Blauwet C, et al. Para sport translation of the IOC consensus on recording and reporting of data for injury and illness in sport. Br J Sports Med 2021;55:1068–1076.

ゴルフに関する外傷・障害・疾病調査

国際オリンピック委員会が共同声明を発表してから、1つ1つのスポーツに特化した外傷・障害・疾病調査に関する共同声明が発表されていて、その第一弾となったのがゴルフです。

ゴルフに関わるアスレティックトレーナーや競技特性がゴルフに似ているスポーツの選手やチームをサポートしているアスレティックトレーナーには読んでいただきたい論文です。

Murray A, Junge A, Robinson PG, et al. International consensus statement: methods for recording and reporting of epidemiological data on injuries and illnesses in golf. Br J Sports Med 2020;54:1136–1141.

サイクリングに関する外傷・障害・疾病調査

サイクリングに関する外傷・障害・疾病調査の合同声明です。

Clarsen, B., Pluim, B. M., Moreno-Perez, V., Bigard, X., Blauwet, C., Del Coso, J., Courel-Ibanez, J., Grimm, K., Jones, N., Kolman, N., Mateo-March, M., Pollastri, L., Lopez-Rodriguez, C., Rios, R. O., Roshon, M., Echevarria, J. H., Madouas, G., Nordhaug, L. P., Patricios, J., & Verhagen, E. (2021). Methods for epidemiological studies in competitive cycling: an extension of the IOC consensus statement on methods for recording and reporting of epidemiological data on injury and illness in sport 2020. British Journal of Sports Medicine, 55(22), 1262-1269. https://doi.org/10.1136/bjsports-2020-103906

テニスに関する外傷・障害・疾病調査

テニスに関する外傷・障害・疾病調査の共同声明です。

Verhagen E, Clarsen B, Capel-Davies J, et al. Tennis-specific extension of the International Olympic Committee consensus statement: methods for recording and reporting of epidemiological data on injury and illness in sport 2020. Br J Sports Med 2021;55:9–13.

サッカーに関する外傷・障害・疾病調査

サッカーに関する外傷・障害・疾病調査の共同声明です。

Waldén M, Mountjoy M, McCall A, et al. Football-specific extension of the IOC consensus statement: methods for recording and reporting epidemiological data on injury and illness in sport 2020. Br J Sports Med 2023;0:1–10. doi:10.1136/bjsports-2022-106405

日本アスレティックトレーニング学会誌2022年8巻特集「スポーツ外傷・障害・疾病における疫学調査の理解」

2022年の4月に日本アスレティックトレーニング学会と日本臨床スポーツ医学会は、スポーツ外傷・障害・疾病調査に関する共同声明を発表し、さらにアスレティックトレーナーがスポーツ外傷・障害・疾病調査に関する理解を深め、調査を実践する上での留意点や工夫すべき点について詳しく学ぶことができるようにスポーツ外傷・障害・疾病調査の特集をしています。

この特集記事はすべて必読です。

特集「スポーツ外傷・障害・疾病における疫学調査の理解」によせて

砂川憲彦:特集「スポーツ外傷・障害・疾病における疫学調査の理解」によせて,日本アスレティックトレーニング学会誌,8(1):1,2022.

共同声明・提言書から読み解くスポーツ外傷・障害および疫学調査手法

山中美和子, 眞下苑子, 砂川憲彦: 共同声明・提言書から読み解くスポーツ外傷・障害および疾病調査手法, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 8 (1): 3-10, 2022. 

世界および日本におけるスポーツ外傷・障害・疾病調査システム

眞下苑子: 世界および日本におけるスポーツ外傷・障害・疾病調査システム, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 8 (1): 11-18, 2022. 

Oslo Sports Trauma Research Center (OSTRC) 質問紙の理解と活用方法

永野康治, 吉田成仁: Oslo Sports Trauma Research Center (OSTRC)質問紙の理解と活用方法, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 8 (1): 19-25, 2022.

外傷・障害・疾病調査実施の留意点ー脳振盪の調査研究を例にー

大伴茉奈, 廣野準一: 外傷・障害・疾病調査実施の留意点ー脳振盪の調査研究を例にー, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 8 (1): 27-31, 2022. 

スポーツ外傷・障害・疾病における疫学データの活用方法

大垣亮, 陣内峻, 八田倫子: スポーツ外傷・障害・疾病における疫学データの活用方法, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 8 (1): 33-41, 2022.

本邦におけるスポーツ傷害(外傷・障害・関連疾患)調査の方法論に関するシステマティックレビュー

過去に日本で実施されたスポーツ外傷・障害・関連疾患の調査及び疫学研究をレビューして、方法論を評価したシステムティックレビューです。

このシステマティックレビューによって統一された方法論による疫学調査の必要性が示唆され、スポーツ外傷・障害・疾病調査に関する提言書を作成する流れになっています。

山中美和子ほか: 本法におけるスポーツ傷害(外傷・障害・関連疾患)調査の方法論に関するシステマティックレビュー. 日本臨床スポーツ医学会誌; 30(3): 781-796. 2022.

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ジンノウチ シュンアスレティックトレーナー
NPO法人スポーツセーフティージャパンに所属。 2011年に米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)になり、2013年にスポーツ医学/ バイオメカニクスで修士課程を修了し、日本に帰国。 選手や保護者など一般の方を対象に、スポーツ関連脳振盪の啓発のため、Facebookで「脳振盪ネットワーク」のページを運営。「脳振盪ハブ」では、スポーツ現場で活動するスポーツ医科学の専門家に向けて情報を発信中。